霞始靆 (かすみはじめてたなびく)

こんにちは、クアドリフォリオの山腰です。まだまだ寒い日がつづきますが、暮らしの中でふと「ちょっと春っぽいな」と感じる瞬間が増えてきました。そんな微妙な季節の変わり目を感じさせるこの時期は七十二候における「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」の期間です。毎年2月24日から2月28日頃にあたり、日々春の訪れを知るころです。

春が近づくと、冬の乾燥した空気とは異なり、大気中に細かな水滴や塵が増え、遠くの景色がぼんやりと霞んで見えるようになります。この自然現象を「霞(かすみ)」と呼びます。遠くに薄くぼんやりとたなびく霞と、近くに深く立ち込める霧。霞は水蒸気をたっぷり含んだ空気で、景色をぼんやりと霞ませる点で霧と似ていますが、春に特有の現象です。寒さが和らぎ、土や植物から甘い香りが漂うこの時期は、心もふわっと浮き立つようです。春の霞は、秋の霧にはない独特の魅力をもっています。

夜になると、霞ではなく「朧(おぼろ)」という言葉を使います。水の神である龍が月にかかっているような様をそのまま字にすると朧になります。朧月夜とは、月だけでなく夜のあらゆるものがぼんやりと霞んで見える状態を表します。家の灯りがぼんやりと見える「灯朧(ひおぼろ)」、草地がかすむ「草朧(くさおぼろ)」、谷間を覆う「谷朧(たにおぼろ)」など、様々な「朧」が春の夜の幻想的な景色を創り出します。

春はどこかゆるみがあって、心地よいぼんやりとした感覚が魅力です。冬の厳しさから解放され、新しい季節の訪れを感じさせる春は、私たちにとって一年の中で特別な時期を象徴しています。自然が織りなすこの美しい変化を楽しむことで、日々の生活に小さな喜びを見出すことができます。冬の終わりから春への移り変わりを感じながら、日々を楽しみましょう。


飛騨市図書館のマンサクの花。毎年見るたびに「錦糸卵みたい」って思います。